小ネタとか。~エレメンタル・カウンセラー編~

 というわけで久しく忘れていた既刊小ネタコーナー。

2018年1月10日発売「エレメンタル・カウンセラー ひよっこ星守りと精霊科医」の深掘りです。

前作「かみさまドクター」がニッチ狙い過ぎた節もあるので異世界行ってみるかーという感じでやってみたやつでした。

この本で印象的なのは兎にも角にも、風花風花先生のナニカちゃんのキャラデザです。

最初に原案として投げたのはこんな感じ↓だったんですが、めちゃくちゃブラッシュアップして頂いて返ってきたのがあの超絶かわいいナニカちゃんでした。

実を言うとなかなか難産な部分の多い作品だったので、結構疲弊しながら書いてた節はあったのですが、あのナニカちゃんのキャラデザのお陰で頑張れたような気がしてます。はい。

で、こっから小ネタ。小ネタというよりは医学的振り返り多めなので、ひょっとしたら「何言ってんだこいつ……」となるかもしれません。

★1話

統合失調症の精霊さま。やはり精神疾患について語る場合外せない疾患ではあるところなので、初っ端からこの題材となりました。

連合弛緩に観念奔逸、感情失禁とわりと教科書的な症状です。でも今にして思うと診断はむしろ統合失調感情障害の方が近いのでは? なんてセルフツッコミ。

精神科薬のチョイスはこの頃はまだ勉強途中だったので今にして見るとちょっと微妙なところもありますが、まあこの超急性期ならハロペリドールで鎮静を図るというオトギさんの発想も妥当なところなんじゃないかと思います。

ちなみにこの作品を執筆してから東洋医学の勉強も始めたりしたので、今書いたら多分ナニカちゃんは漢方薬使いになってたと思います。


★2話

OCD症例。そして病んだ精霊を狩るものたち。

この作品の裏テーマが「精神医学が誕生する以前の世界に現代精神医学を持って殴り込み」というところだったので、ユースティス君は現代医学の徒たるオトギさんとは対立します。

……この世界においては精霊病に冒された精霊たちが起こした精霊災害によって命を落とす人々が多くいる手前、彼の思想も見ようによっては一種の社会正義とも言えるのですが(無論、現代においてはNGですが)。しかしあくまで医師であり、精霊たちを一人の「患者」として見るオトギさんにとっては、それは許容出来る話ではありません。


そんな対立の話と平行して、このエピソードではオトギさんの事情も少し明らかになります。

でもそんなことより重要なのはナニカちゃんの◯◯◯姿なので、そこはまあ追々。

ちなみにナニカちゃんの祖母が「外なる者」、つまり現代人だったという話も少しばかりここで触れています。

その後があれば色々とその関連の話とかもしようと思ってたのですが、特にその後もなかったのでお蔵入りと相成りました。世知辛いぜ。


★3話

精霊クレマチヤ登場、そしてオトギさんの一時帰還。

異世界モノにおいて現代に一度戻るのはお約束だと思ってるのですが、最近はそうでもないみたいです。

それはそれとして、ここでまたオトギさんの職場登場です。

「芦原大学病院」。誰も気付かないと思うので言っちゃいますが、実はオトギさんの出自は前作「かみさまドクター」と共通の世界だったりします。

あっちは「芦原総合病院」なので、同じ地域の市中病院なんですね。

そんな事情もあって、実はこのエピソードで登場した看護師さん。彼女の正体は誰なのかと言うと、前作「かみさまドクター」で主人公、詠さんを支えてくれたベテラン美少女看護師あきみさんだったりします。この頃はかみさまドクター時系列からカウントして10年ほど前になるので、まだまだ正真正銘の新米看護師さんですが。


そういう事情を考えると、オトギさんの住んでいた本来の世界もその先イロイロとオカルトな事件が多発するトンデモ世界になるわけですが――この頃のオトギさんはまだ、知る由もありません。


……それはそうと、閑話休題。

このエピソードでも、ナニカちゃん特製のマジカル精神科薬の登場です。

ミルタザピン。またの名をリフレックス。わりかし新薬の部類ですね。

そんなモノの存在を知っているということは、ナニカちゃんの祖母というのは一体……?という話になるわけですが、まあそれはさておき。

この頃はまだ精神科の理解が十分ではなかったのでガイドライン通りに普通に抗鬱剤での治療を提示していましたが、今にして考えると鬱病ではなく双極性障害と捉えて気分安定薬での治療を始める方が安全なんじゃないかな……と思います。

まあ結果的に電気けいれん療法までもつれ込んだわけなので、同じといえば同じですが。


とまあ、とりとめもなくイロイロと書いてみましたが、ひとまずはこんなところで。

「こころの病」というものがいまだ理解されていない世界に降り立った、一人の精神科医。

そんな彼と現地の少女は「精霊病」と呼ばれるこころの病を患った人ならざる存在、「精霊」たちと向き合い、癒やしていく。

もしも未読で興味を持った方がいらっしゃったら、これを機にお手にとってみてはいかがでしょうか。

コールドカーテン

赤とろ/西塔鼎 告知とかなんか細かいのとか色々ちまちま置いておけたらいいなっていうホームページ。